オメガ(OMEGA)シーマスターの歴史|誕生から歴代モデルを紹介します
世界的時計メーカーのオメガには、代名詞ともいえるシリーズが2つあります。
「シーマスター」と「スピードマスター」です。
なかでもシーマスターはオメガの歴史の中でも登場が早く、世界的ブランドへの貢献度も多大なものがあります。
最高防水性能1200m(モデルによる)、耐圧性、防塵性などの高機能を誇るシーマスターは、プロダイバーを始めとするプロフェッショナル向けの時計でしたが、洗練されたデザインはシーンを選ばず、タウンユースでも高い人気があります。
そんなシーマスターの歴史を派生モデルと共に今回は解説してきたいと思います。
「1848年~1948年 オメガ創立からシーマスター誕生まで」
シーマスターの生みの親であるオメガの歴史は、23歳の青年が開いた小さな時計工房からスタートします。
1848年 ルイ・ブラン氏が、ラ・ショー・ド・フォンに工房を開く
1880年 拠点をビエンヌに移動
1885年 初の量産型キャリバー「ラブラドール」を製造
1889年 年間生産数10万本を達成
1892年 世界初のミニッツリピーター付き腕時計を発表
1894年 「オメガキャリバー」を発表
1896年 スイス国際見本市で金メダルを受賞
1897年 ベルギーの世界博覧会でグランプリを受賞
1900年 パリ万博でオメガコレクションとしてグランプリ受賞
1903年 社名を「オメガ」に変更
1932年 ロサンゼルスオリンピックで公式時計に採用
同年、オメガ初の防水時計「マリーン」を発表
1948年 シーマスター発表
ルイ・ブランと2人の息子
オメガの創立者であるルイ・ブラン氏は腕の良い時計技師で、精度の高さからその名はすぐに広く知られることとなります。
しかし、本当の意味で現在のオメガの礎を築いたのは、ブラン氏の2人の息子でした。
ルイ・ブラン氏の死後、工房を受け継いだブラン兄弟は拠点を現在も本社のあるビエンヌに移し、自社一貫生産を開始します。
量産型キャリバーの製造、世界初のミニッツリピーター付き時計の発表など、小さな工房を世界トップレベルの技術を誇る時計メーカーへと押し上げました。
スイスを代表する国際的機械式時計メーカーへ
究極を意味する現在の社名「オメガ」の由来となったのは、1894年に発表したムーブメント「オメガキャリバー」です。
心棒とリュウズでの巻き上げと時間設定は当時としては画期的なものでしたが、加えて分業制による機械式時計の製造も導入しました。
この分業制はスイスの時計産業の新たな基準となり、のちの発展に貢献します。
「オメガキャリバー」の誕生によって、時計大国スイスへの牽引役としての役割も果たすようになったのです。
世界初のダイバーズウォッチ「マリーン」誕生
「オメガキャリバー」や博覧会での受賞などを機に高い技術力を認知されたオメガは、1932年に初めて防水時計を製造します。英国軍からのオーダーがきっかけでした。
ねじ込み式の裏蓋が特徴の「マリーン」は、ダイバーズウォッチとしては世界で初めて一般発売された時計でもあります。
なお、1932年に世界初の有人深海調査として潜水球で水深923mの探査を達成したウィリアム・ビービ氏は、「マリーン」を「この時計の優れた耐水性、防塵性、腐食耐性は、時計製造の科学における偉大な進歩だ」と称しています。
この「マリーン」が原型となって、1948年に「シーマスター」が誕生します。
軍用モデルの「マリーン」を一部改良したもので、ダイバーウォッチという実用性重視の時計ながら優れたデザイン性で大ヒットしました。
「登場から2000年までのシーマスターの歴史」
機能性の高さを実証したシーマスター誕生により、オメガの名声は世界へと広まります。
その過程で新たな高性能モデルが生まれ、テクニカル面はもちろんのこと、デザイン性も時代のニーズに合わせて変化してゆきます。
1948年 シーマスター誕生
1950年 シーマスターが英国海軍で正式採用
1957年 本格派ダイバーズウォッチ「シーマスター 300」誕生
1968年 「シーマスター300」をつけたダイバーが世界初の推進365mを樹立
1970年 地底探査ヤヌス計画で「プロプロフ」を使用
1981年 ジャック・マイヨール氏が素潜り世界記録101mを達成の際に「シーマスター120」を使用
1988年 「ノーチラス号」の深海地震調査に「シーマスタープロフェッショナル200m」を使用
1993年 「ダイバー300m」誕生
1995年 映画「007」に「シーマスター」が初登場。
1999年 世界初となるコーアクシャル脱進機の実用化に成功
守護神シーホースと「シーマスター300」への進化
軍用として開発されたシーマスターは、その防水性能の高さから正式に英国海軍で採用となり、その名を世界に知らしめます。
シンボルにギリシャ神話に登場する海の守護神・シーホースが登場したのもこの頃で、ヴェネチアのゴンドラの装飾から着想を得て1958年に採用されました。
近年はシースルーバックが主流となっていますが、現在も一部モデルにオメガの象徴としてみることができます。
今もなお人気のモデル「シーマスター300」は、シーマスター発表から10年目の1957年に誕生します。
発売当初、日常防水程度であったシーマスターをプロフェッショナル仕様の300m防水へとグレードアップしたモデルで、当時としては画期的な高性能でした。
テクニカルやデザインをアップデートしながら現在もオメガを代表する時計の1つとなっています。
この1957年は「スピードマスター」と「レイルマスター」も誕生しており、オメガのクラシックタイムピーストリロジーとしてその名を馳せています。
深海で本領を発揮
1960年代~1980年代にかけてのシーマスターは、歴史的偉業の数々に立ち会うことになります。
1970年の「ヤヌス計画」では、同年に発表された深海で作業するダイバーのための本格的プロダイバーウォッチ「シーマスタープロフェッショナル600」、通称プロプロフが使用されます。
600m防水のこの時計は深海250mでの過酷な作業でも故障せず、防水性と耐久性の高さを示し、ダイバーウォッチとしての高い地位を確立しました。
映画「グラン・ブルー」のモデルでもあるジャック・マイヨール氏が世界記録樹立の際に使用した「シーマスター120」は、防水性と耐圧性、深海での文字盤の視認性の高さから選んだといわれていて、信頼のおける機能性からシーマスターの愛用者となりました。
後述しますが、のちにシーマスターのジャック・マイヨール限定モデルも誕生します。
「ダイバー300」誕生とジェームズ・ボンドとの出会い
シーマスターの歴史を語るうえで欠かせない人物、映画「007」の主人公ジェームズ・ボンドとの関係も1900年代の終り間際からはじまります。
原作では他メーカーの時計を愛用していることになっていますが、映画版では1995年の「ゴールデンアイ」以降、すべての作品でオメガのシーマスターを使用しています。
1993年に誕生した シーマスターの中でも高い人気を誇る、逆回転防止ベゼルと文字盤の波模様が特徴的な本格派のダイバーズウォッチ「ダイバー300m」をはじめ、後述する「アクアテラ」や「プラネットオーシャン」などです。
オメガも応えて特別モデルを製造・提供してきました。
ジェームズ・ボンドが英国海軍出身であったこと、エージェントとしての活動に耐えうる高性能、スタイリッシュなボンドのスタイルにマッチするデザインなど、抜群の相性であったシーマスターとジェームズ・ボンドどの出会いは必然だったといえます。
また、この出会いがシーマスターの世界観をさらに広げることになりました。
機械式時計の歴史を変えたコーアクシャルの実用化
シーマスターと共に数々の偉業をなしてきたオメガは、「時計業界における20世紀最大の発明」と称される「コーアクシャル脱進機」の実用化という快挙で1990年代を締めくくります。
従来のムーブメントは振り子の原理を十全に活かせず、ゼンマイの力にロスがありました。
1978年にジョージ・ダニエルズ氏がこの機構を改善し、新たに「コーアクシャル脱進機」を開発しましたが、どのメーカーに持ち込んでも実用化には至りませんでした。
しかしオメガは、数々の困難を乗り越え実現してみせたのです。
この出来事は、さまざまな時計メーカーが覇を競う中で技術開発で世界最高峰の地位を確かなものにすると同時に、機械式時計の新たな時代の幕開けとなりました。
「2000年以降のシーマスターの歴史」
2000年代に入ってからのシーマスターは新たなモデルも加わり、さらに大きく飛躍します。
2003年 「アクアテラ」「アプネアマイヨール」誕生
2005年 「プラネットオーシャン」誕生
2007年 自社開発ムーブメント「Cal.8500/8501」を発表
2011年 世界最大の時計見本市・バーゼルフェアで「Cal.9300/9301」を発表
2018年 シーマスター70周年記念モデル「シーマスター 1948 リミテッドエディション」誕生
深海からビジネスシーンまで
2000年代に入っても新たなモデル開発に余念はありません。
2003年に誕生したアクアテラは、ジャック・マイヨール氏愛用だった「シーマスター120」の後継モデルで、防水性能が150mにグレードアップした一方でケースは薄型になり、スタイリッシュなデザインへと変貌を遂げました。
そのため、ダイバーウォッチであるにもかかわらずドレスウォッチとしての使用も可能となり、ビジネスシーンでも広く愛用されています。
アクアテラ誕生の年に、同じくジャック・マイヨール氏と深い関係の時計がもう1つ誕生しています。
「アプネアマイヨール」です。
実は1995年から続いたジャック・マイヨール限定モデルがあったのですが、彼の逝去の翌年、2002年に終わりを迎えます。
しかし、生前に依頼していたモデルがありました。
それまでの文字盤を変更しただけの限定モデルとは異なる特別な仕様だったため「アプネアマイヨール」の名を冠して登場したのです。
マイヨール氏のアイデアで搭載した「アプネアカウンター」が特徴で、一目で潜水時間が把握できる、まさにダイバーのための機能です。
「アプネア」はラテン語で呼吸停止を意味し、文字盤の7つの円が無呼吸で生存できる限界といわれる7分を瞬時に伝えます。
このように1948年から数々の偉業や偉人と歴史を紡いできたシーマスターは、2005年に「プラネットオーシャン」という到達点にたどり着きます。
600m防水に加え、自動巻きクロノメーター、コーアクシャルムーブメントといったハイスペックながらデザイン性にもこだわったモデルです。
初代モデルで使用したオレンジトーンは有名で、カラーバリエーションが増えた現在もプラネットオーシャンのアイコンカラーになっています。
進化するオメガのムーブメント
近年のオメガは、新技術の開発にも意欲的です。
2007年には30年ぶりとなる新型ムーブメントを、2011年には6年かけて開発したクロノグラフ搭載のコーアクシャル・キャリバーを発表しています。
2011年発表の「Cal.9300/9301」は、「プラネットオーシャン」に搭載され、時差の修正に便利なタイムゾーン機能や60時間のパワーリザーブなどが話題になりました。
また、2015年ごろには、名実ともに世界最高クラスと認定された証である「マスター クロノメーター」の称号も得ました。
スイス連邦計量・認定局(METAS)の品質規格で、機械式時計の性能に多大な影響を及ぼす耐磁性能を始め、いくつもの厳しい審査基準を設けています。
シーマスターは、マスタークロノメーター制定前から基準をクリアするムーブメントを採用しており、スイス公式クロノメーター検査局(COSC)認定キャリバーを「プラネットオーシャン」を始めとするシーマスターシリーズにも搭載しています。
なお、2019年には冒険家ヴィクター・ヴェスコヴォ氏らによる、世界初の五大洋の最深部への有人探査のパートナーとしてプロ仕様のダイバーウォッチ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」が採用され、マリアナ海溝の世界記録となる最深部10,925mの海域で優れた性能性を実証してみせました。
70年の歴史を振り返る限定モデル
2018年に70周年を迎えたシーマスター。
1948年製のシーマスターをベースにした記念モデル「シーマスター 1948 プラチナ センターセコンド」と「シーマスター1948 プラチナ スモールセコンド」には、70周年記念ロゴに加えて、ボートとジェット戦闘機が描かれています。
シーマスターが誇る防水性と、軍用として採用された歴史に由来するもので、70周年にふさわしいデザインといえます。
1948年の登場以来、歴史的瞬間から何気ない日常まで、世界中のさまざまなシーンで活躍してきたシーマスターの進化は今も続いています。
80周年、100周年に向けてその価値はますます高まるのではないでしょうか。
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