ダイヤモンドのカット|光をつかまえる方法とカットの種類
ダイヤモンドのカットは「いかに美しく魅せるか」を追求しています。
カットの善し悪しがダイヤモンドの輝きと美しさに多大な影響を与えるのです。
今回はダイヤモンドのカット方法と主なカットの種類をご紹介していきます。これを知れば、ダイヤモンドのジュエリー選びが一層楽しくなること請け合いです。
ダイヤモンドのカットとは
ダイヤモンドは原石のままではその美しさを十分に発揮することができません。これはダイヤモンドに限らずすべての宝石にいえることです。
原石を美しい宝石へと生まれ変わらせる技術がカット(研磨)です。
ダイヤモンドの評価基準に4Cというものがあります。
これは宝石鑑定の世界で最も権威のある国際教育機関「米国宝石学会(GIA)」が考案したもので、ダイヤモンドを「カラット(Carat)」「カット(Cut)」「クラリティ(Clarity)」「カラー(Color)」という4つの項目で評価するものです。この4Cの中でもカットが最も重要だと考えられています。
美しく仕上がった(カットされた)ダイヤモンドはあらゆるファセットがその職人の技と手入れを発揮するので、見事なものです。 ダイヤモンドが光と相互作用するとき、それぞれのファセットと角度が目に入る光の量に影響します。 これがダイヤモンドの表向きの外観になり、魅力的か否かを決めます。
ダイヤモンドの品質を表すためにGIAが開発したシステム、4Cの中でも、カットは最も重要です。 カラー、クラリティ(透明度)、カット、カラット重量の4つの要因は、GIAがダイヤモンドの世界標準として1950年代初めに作成し、インターナショナルダイヤモンドグレーディングシステムの基礎となっています。
※ファセット:ダイヤモンドのカット面
そんな美しい輝きを決定付けるカットの中で最も有名なものが「ラウンドブリリアントカット」です。
ダイヤモンドの屈折や反射を光学的に計算し、確立されたこのカット方法はダイヤモンドの輝きを最大限に引き出せるといわれます。そのことは別名「アイディールカット(Ideal Cut)=理想的なカット」と呼ばれることからもわかります。
4Cの鑑定書「ダイヤモンド・グレーディング・レポート」で「カットグレードが評価されるのはラウンドブリリアントカットのみ」となっているほど、ダイヤモンドカットのスタンダードです。
ダイヤモンドのカット方法
ダイヤモンドのカットは同じダイヤモンドの粉末を用います。スカイフと呼ばれる円盤を高速で回転させ、そこにダイヤモンド粉末を刷り込みながら原石を少しずつ磨いていきます。
ラウンドブリリアントカットは石の中央部分を丸くカットし、中央から下は放射線状にカットされます。58(キューレット、下面の面を除けば57)もの面を持ち、テーブルの大きさやパビリオンの角度など各部のサイズや角度が計算されています。
なぜここまで計算するのかというと、「全反射」という現象を起こさせるためです。光が物質に射し込むときに境界面で光が折れ曲がる現象を「屈折」といいますが、58もの面を持つダイヤモンドにはさまざまな角度から光が入射し、屈折します。この時入射角度が一定範囲を超えると起こる現象が「全反射」、
いわゆる「光をつかまえてしまう」状態です。
ダイヤモンドが光り輝くのは、内部に閉じ込められた光がキラキラと、人の瞳に煌めいて見えるからなのです。
ここまで読むとラウンドブリリアントカットが万能のように思えますが、決してそうではありません。
デメリットとしてカットに原石のロスが多いことが挙げられます。その損失率は原石の実に50%以上にもなります。他にもジュエリーのデザインや、合わせるファッションによっても、相応しいカットは違ってきます。
ブリリアントカットの歴史
ラウンドブリリアントカットの原型となるブリリアントカットは17世紀のイタリア・ヴェネツィアで考案されました。
そして20世紀初めにベルギーのトルコウスキー家の宝石職人が理論的・数学的計算に基づいてカット方法を確立しました。
きっかけとなったのが19世紀末に発明された電灯だといわれています。トルコウスキーはダイヤモンドに射し込む光の反射や屈折率を精密に計算して、ダイヤモンドが最も美しく輝くブリリアントカットを考え出したのです。その後100年に渡って研究が続けられ、現在ではダイヤモンドカットの主流となっています。
ブリリアントカットは今もなお研究改良が続けられており、97面体や144面体なども生まれています。
ダイヤモンドのカット種類
定番のラウンドブリリアントカット以外にもダイヤモンドのカットにはたくさんの種類があり、おおまかに「ブリリアントカット」と「ステップカット」に大別されます。
これから主なものをご紹介しますので、それぞれの特徴を知って、自分に合うダイヤモンドジュエリー選びの参考にしてください。
ブリリアントカット6選
ブリリアントカットはダイヤモンドの輝きを最も引き出す為のカットです。ラウンドブリリアントカット以外のカットはファンシーシェイプカットとも呼ばれています。
オールドマイン ブリリアントカット
オールドマインカットは丸みを帯びた四角形のカットです。
クッションのような形をしていることから、別名クッションシェイプカットとも呼ばれます。17世紀に考案されたブリリアントカットはこの「オールドマインカット」で、現在のブリリアントカットの原型といわれています。
ペアーシェイプ ブリリアントカット
ペアーシェイプカットは洋ナシ形のカットです。
ラウンドブリリアントカット以外のカットでは比較的ポピュラーで、ペンダントにも多く採用されています。またペアーシェイプカットの指輪は指を長く見せる効果があり女性に人気があります。縦横の比率によって印象が大きく変わってくるため、シェイプ選びが重要になります。
涙の雫のような形をしたものは「ティアドロップ」とも呼ばれます。
マーキス ブリリアントカット
マーキスカットは柔らかな曲線とシャープな両端をした舟形のカットです。
由来は18世紀まで遡ります。1745年フランスのルイ15世は公妾のポンパドゥール夫人に侯爵(マーキス)の称号を与えました。ちょうどそのころ生まれた舟形のダイヤモンドは、エレガントなファッションリーダーだったポンパドゥール夫人にちなみ「マーキス」と呼ばれるようになったのです。
オーバル ブリリアントカット
楕円形(オーバル)のブリリアントカットです。
丸みを帯びたシェイプは女性らしく柔らかな印象です。オーバルカットはルビーやサファイアなどダイヤモンド以外の宝石にもよく使われてきました。
ペアーシェイプカット同様、縦横の比率で大きく印象が変わってきます。
ハートシェイプ ブリリアントカット
その名のとおりハートの形をした、米国生まれのブリリアントカットです。
上部の凹みを作るために原石ロスが多いことから、最も贅沢なカットといわれます。
しかしながら愛を象徴するキュートな形状は女性に根強い人気を誇ります。希少性も高いことから高額になることが多いのがハートシェイプカットです。
プリンセス ブリリアントカット
プリンセスカットは1970年代後半に登場した比較的新しいカットです。
ブリリアントカットの輝きを有しながらステップカットの要素も取り入れたハイブリッドなカットで、厳密に言えば「ミックスカット」に分類されます。
カットとしての歴史が浅いながらも、その美しさや「プリンセス」というネーミングの良さで、商業的にも成功したカットです。
四角形のため、ラウンドブリリアントカットより原石のロスが少ないという利点がありますが、角が欠けやすいという欠点も持ちます。
ステップカット4選
ステップカットは側面から見ると階段(ステップ)状に見えることから名付けられました。
ブリリアントカットが、外からの光を受けて輝くのに対し、面を大きくとったステップカットは、「宝石の内に秘める輝き」を発揮させるカットです。
エメラルドカット
エメラルドカットはステップカットの代表格です。
コロンビア産のエメラルドがこの形にカットされることから名付けられました。
ブリリアントカットのような輝きはありませんが上面が大きく開放的で、ダイヤモンドの透き通るような透明感を楽しむことができます。
その分「クラリティ(透明度)」やカラット数が非常に重要で、エメラルドカットができるダイヤモンドはごくわずかなため、希少性も相まってゴージャスな印象を与えられるカットです。
バゲットカット
バゲットカットは角がカットされていない長方形のステップカットです。
棒や杖(バゲット)の形をしていることからこの名で呼ばれます。大粒のものは角が欠けやすいため、ほとんどが小粒にカットされます。ロレックスなどの高級時計ブランドではこのバケットカットの宝石が装飾として施されることもあります。
連続して並べると強い輝きを放つため、リングの全周に石を敷き詰めたバンドリングなどによく見られます。
スクエアカット
スクエアカットは正方形にカットされたシンプルなカットです。
カット面が大きいのが特徴で、ダイヤモンド本来の美しさを楽しむことができます。アンティークジュエリーにもよく使われています。
このスクエアカットにブリリアントカットの要素を加えて、輝きを持たせたものが「プリンセスカット」です。
テーパーカット
テーパーカットは台形でシャープな形のカットです。
ブリリアントカットのようなキラキラとした輝きはありませんが、氷の柱のようなクールな美しさを持ちます。
台形という特徴を活かし、連続して並べることで曲線を描くこともできます。他の宝石を引き立てることにも優れたカットがこのテーパーカットです。
その他のカット2選
ローズカット
ローズカットは16世紀のヨーロッパで用いられていた歴史あるカットです。
ローズとはバラを意味しますが花びらのことではなく、24の三角形の面で形成された姿が「バラのつぼみ」を思わせることに由来します。
ブリリアントカットが主流となってからは見られることは少なくなりましたが、脇石として採用されることもあります。カット技術の歴史を感じられるカットです。
ブリオレットカット
ブリオレットカットはペアーシェイプに似たドロップ型で、周囲を三角形または長方形の面で囲んでいるカットです。
こちらもローズカットに劣らず歴史が古く、15世紀のベルギーで考案されたといわれるカットです。ブリオレットカットの条件に合う原石はとても少なく、手間のかかる贅沢なものなので、あまり見かけることのできない非常に希少なカットです。
まとめ
ここまでダイヤモンドの輝き、美しさの秘密、カットについてお話してきましたがいかがだったでしょうか。
驚くべきはこれらのカットはすべて、職人が手作業で行っているということです。現代でも測定や工具は機械化されてはいますが、最終的な仕上がりは職人の腕が物を言うことに変わりはありません。ジュエリーブランドには専属のダイヤモンドカッター(研磨士)が在籍しているほどです。
原石を美しく魅せるカットを追求し続ける職人の情熱を知れば、ダイヤモンドがより一層輝いて、透き通って見えることでしょう。
皆さんもぜひ、自分に相応しいカット、ダイヤモンドジュエリーを探してみてください。
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