ダイヤモンドは炭素で出来ている?構造や人工ダイヤの作り方
数十億年前に地球内部で誕生したダイヤモンドは、単一の炭素原子のみで形成されている唯一の宝石です。
炭と同じ炭素原子でできているために、興味深いいくつかの特徴も持ちます。
また近年では科学技術によって人工的にダイヤモンドを作り出すことも可能になりました。
今回は不思議な魅力に溢れたダイヤモンドの構造や特徴、人工ダイヤモンドの作り方をご紹介していきます。
炭素でできているって本当?ダイヤモンドの構造
本当です。
ダイヤモンドは単一の炭素原子のみで形成された石で、化学式で表す際も「C」の一文字です。
サファイアやルビーなど他の宝石が4種類の元素で形成されているのと比べて、ダイヤモンドは「ダイヤモンドの結晶構造」と呼ばれる、炭素原子同士が強固に結合したとても特殊な構造をしています。
化学用語では「共有結合」といわれる原子間での電子対の共有を伴う化学結合で、結び付きが非常に強い特徴があります。
「ダイヤモンドは地球上で最も硬い」といわれる所以は、この非常に強い炭素原子の結晶構造によるものなのです。
また天然ダイヤモンドは密度の高い特殊な炭素構造から成り立っており、通常99.95%の炭素からできているといわれています。
残りの0.05%には微量のその他の元素を含んでいることもあり、この元素によってはダイヤモンドの色や形状などに影響を与えることもあります。
ダイヤモンドの中には「ファンシカラーダイヤモンド」と呼ばれるさまざまな色をしたダイヤモンドが稀に発見されます。
ダイヤモンドと鉛筆の構造や特徴の違い
鉛筆は、ダイヤモンドと同じく炭素原子のみで形成されています。
非常に硬いダイヤモンドに比べ、鉛筆の芯はとても柔らかいのですが、この違いは一体なぜ生まれるのでしょう。
その理由は、炭素原子の構造や配列に異なる点があるからです。図をご覧いただいてもわかるように、ダイヤモンドは3次元の結晶構造をしているのに対して、鉛筆(Graphite)結晶構造がシート状です。
炭素原子の結びつきが強く高い硬度が特徴のダイヤモンドに比べて、鉛筆の芯は炭素原子の縦の結びつきが弱く、力を加えると離れてしまいます。
鉛筆を紙に押し当てると字が書くことができるのは、この特徴によるものです。
天然ダイヤモンドのでき方とは
ダイヤモンドは遥か昔、地球の内部で誕生しました。具体的な誕生時期についてはおよそ30億年前という説や生命誕生よりも前に生まれていたなどという説があります。
炭素原子の集合体を含んだ岩石が高温で溶けると炭素原子が出てくるのですが、これが高温で高い圧力がかかる環境で炭素が強く結びつき、ダイヤモンドの結晶が形成されます。
天然のダイヤモンドが生まれたのは地球の深部で、地下150kmとも200kmともいわれています。
現代の技術ではそこまで掘ることは到底不可能ですので、世の中に流通しているダイヤモンドは、地球の火山活動によって人間の手が届く地表の近くに押しあげられたものです。
噴火活動によって勢いよく噴き出したマグマが冷えて固まると、キンバーライト(キンバリー岩)と呼ばれる岩石になります。
ダイヤモンドの原石は、このキンバーライトの中からごく稀に見つかります。そのため、天然ダイヤモンドの採掘は、かつてマグマが通った道を掘り進むように行われるのです。
さらに、ダイヤモンドが採掘されるのは、古い地質が残っている場所に限られています。
日本は火山の多い国ですが、地層が比較的新しいため、残念ながらダイヤモンドを採ることはできません。
主な産出国は、ロシア、ボツワナ、コンゴ共和国、オーストラリアなどです。
地球の奥深くに眠るダイヤモンドが噴火によって地表に現れる確率、さらにそれを人間が見つけて手に取ることができる確率を考えると、天然ダイヤモンドとの出会いは「奇跡」といっても過言ではないでしょう。
ダイヤモンドの原石と採掘方法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
関連記事:ダイヤモンドの原石は地球からの預かり物|採掘方法と種類
ダイヤモンドの燃える特徴
ダイヤモンドはこの世で最も硬いといわれるほどの硬度を持っていますが、実はダイヤモンドは燃やすことができます。
ダイヤの原料は炭と同じ炭素のため、800度以上の高温で燃やすと発火し、最終的には炭化して二酸化炭素へと姿を変えてしまいます。
どんなに硬いダイヤでも、炭素でできているという性質上、高温の炎には太刀打ちできないようです。
ちなみに耐熱性の高い宝石としてはサファイアが挙げられ、2000度程度の熱に耐えられるとされています。耐熱素材としてサファイアガラスのような工業材料にも用いられています。
人工ダイヤモンドを作る方法
かつては市場に出回っているダイヤは天然ものが一般的でしたが、最近では技術が発展し、人工ダイヤモンドの割合も増えてきました。
人工ダイヤの製造については、1950年代にようやく地上でダイヤモンドの結晶化を行う技術が確立されたといわれています。当初は綺麗なダイヤモンドの生産が難しく、一般に出回る人工ダイヤの用途の多くはドリルの先端やノコギリの歯など、工業用がメインとなっていました。
近年では人工ダイヤの製造技術の発展は著しく、遺骨からダイヤを製造するという手法まで確立されています。
2018年にダイヤモンド業界を牛耳るデビアス社が、人工ダイヤモンドのブランド「Lightbox」を立ち上げた際は、大きな話題を呼びました。
とはいえ宝石品質のダイヤを作る製造方法はいまだ限られていて、現在では下記2種類の方法によって宝飾用ダイヤの製造を行っています。
炭素原子から作られる「化学気相成長法」
CVD法(Chemical Vapor Deposition)または「化学気相成長法」などと呼ばれる方法です。高温低圧下で炭素を主成分とするガスからダイヤを作り出す技術です。
原料の物質をガスの状態にして、それを固体の表面で反応させて膜を作ります。
この方法で使われる材料は、メタンなど炭素を多く含んでいる気体です。メタンを炭素と水素に分解し、ダイヤモンドの種結晶に付着させて平板状の人工ダイヤモンド結晶を作ります。
宝石品質のダイヤを作り出すには、CVD法の中でも「マイクロ波プラズマ法」を用いるのが一般的とされています。
高圧力を必要としないのが最大のメリットです。
高温と高圧によって作られる「高温高圧法」
HPHT法(High Pressure High Temperature)または「高温高圧法」と呼ばれる方法です。
天然のダイヤが地球深部で形成される際の高温高圧の環境を、人工的に再現したものです。
非常に高い温度と圧力を加えて炭素物質をダイヤの結晶へ変化させ、そこからさらに「温度差法」という技術を用いることで、ようやく宝石品質のダイヤモンドを作り出すことができます。
人工ダイヤモンド開発の初期から用いられてきました。
通常は黒鉛を原料にし、鉄やコバルトなどの金属を溶媒に用いて結晶を作ります。コストが安く、大量生産に向いている作り方です。
骨からダイヤモンドを作る方法
近年になって注目を集めているのが、骨から作るダイヤモンドです。
亡くなった人を火葬したのちに拾う遺骨を使ってダイヤモンドを作り出し、普段から身に着けられるジュエリーにするというのは、新しい弔いの形だといえます。
この場合も、炭素から作ることに変わりはありません。遺骨に含まれる炭素を抽出し、高温高圧法にて原石を生成します。それを注文に応じて職人が研磨・カットし、ジュエリーに加工します。
費用は数十万円からと決して安くはありませんが、お墓を持たないライフスタイルと相性がよく、今後ニーズが高まっていく可能性を秘めているといえるでしょう。
まとめ
今回ご紹介したように、ダイヤモンドは他の宝石にはない独特な構造や特徴を持った石で、知れば知るほど奥が深い宝石です。
「奇跡の石」ともいわれるダイヤモンドへの知識を深めていくことで、今まで知らなかったダイヤの未知なる魅力に触れることができるかもしれません。
事前査定ならスムーズにお取引が可能です!
選べる3つの査定方法!
他の人はこんな豆知識も見ています
-
【2023年版】ロレックスデイトナを定価で買う方法とは
デイトナはロレックスの代表的なモデルの1つであり、とても人気が高い商品であるため簡単には手に入らないことでも有名です。そんなデイトナを定価で購入するにはどうすればよいのでしょうか。 ここではデイトナを定価で購入する方法や、そもそも定価で購入しにくい理由とは何なのかを詳しく解説し、実際にデイトナを購...
-
エルメスのバーキンやケリーはなぜ高い?価値が高い3つの理由を紹介
世界的に知名度の高い高級ブランド「 Hermes(エルメス) 」。 世界には他にも「Louis Vuitton(ルイヴィトン)」「CHANEL(シャネル)」などの有名ブランドが数多く存在していますが、その中でもエルメスの高級感は別格です。 特に有名なバッグ、「バーキン」や「ケリー」に...
-
オーデマピゲ愛用の芸能人・有名人・アスリート
オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET) はパテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンと並ぶ世界三大高級時計ブランド。 高級時計としての格付けはロレックスよりも上にあたり、価格もハイクラスなため、 一体どんな人が着用しているのか?客層や購入モデルが気になるのではないでしょうか...
-
《2023年9月最新》ロレックス定価一覧表
数ある腕時計ブランドの中で、圧倒的な人気やステータス、資産価値などで他の追随を許さない ロレックス(ROLEX) 。 そのロレックスにおいて定期的に注目されるのが定価です。 価格改定のペースは早くなってきており、前回2022年9月の価格改定から僅か4カ月後の2023年1月1日、またもや...
-
金の買取価格はどこも同じなの?金を高く売る方法
近年高値を維持している金相場ですが、 金相場がそのまま買取金額 になると思っていませんか? 実は、 金相場と金の買取価格はまったく異なるものなので相場価格での買取は行ってくれません。 また、買取店によって買取価格も異なり、店舗によっては元の相場よりも大幅に減額されて査定金額...
-
ロレックスは保証書なしでも大丈夫!付属品を紛失したときの買取
ロレックスで、買取してもらう前に気になることはいくつかあると思います。 その中でも 「保証書の有無」 は買取にどれだけ影響するのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。 ロレックスは保証書がなくても買取をしてくれる専門店が多くありますが、保証書がないことによりモデルによって...
-
パライバトルマリンの意味・宝石言葉|買取相場や偽物の見分け方も解説
ブルーグリーンのネオン色に輝く希少石、パライバトルマリン。 世界三大希少石の一つなのですが、その希少性からなかなか市場に出回ることのない宝石です。 パライバトルマリンは、エネルギーバランスを整える、負のパワーを無くす神秘的な力があると信じられています。 この記事では、 パライバト...
-
シルバー925の価値と買取相場|高価買取が期待できるブランドも解説
皆さんが持っているアクセサリーに、 「シルバー925」 の刻印が入っているものはありますか? シルバー925とは素材の種類を示しており、 貴金属 として売却できる商品です。 また、ブランドによっては高額買取も期待できます。 そこで、今回は シルバー925の概要や価値 について...
-
プラチナの価値はなくなってしまう?相場と今後の予想について
一般社団法人日本金地金流通協会によると、2020年の世界の金の産出量は3486.5t、プラチナの産出量は153.8tとなっています。 (参考:https://www.jgma.or.jp/information/gold-data/、https://www.jgma.or.jp/infor...
-
ロレックス デイトジャスト【36mm】【41mm】どっちがいいの? 41mmはでかい?
ロレックス の定番コレクションである「デイトジャスト」には、ケースサイズが36mmのものと、41mmのものが存在します。 わずか5mmの差ですが、腕元では印象が大きく変わりますので、購入する際は慎重に選びたいところです。 この記事では、 デイトジャスト36および41の特徴を解説し、両...